リスク&リターンを応用するテクニック
リスク&リターンの話
リスクとリターンの関係に関しての詳細はこちらの記事をご参照ください。
「リスクが上がれば上がるほど得られるリターンは上がっていく」というのが基本的なルールであり、それは他のアプリにも応用が可能です。
今回はゲームの記事じゃないです、すいません!笑
最終的にはそのテクニックをゲームに逆輸入できるんじゃないか?って話も少しさせてもらいます。
マンガワンはアプリのスクリーンショットがないので、今回は画像がありません。
文字だけでわかりにくいかもしれないですが、ご了承ください。(時間あったらそのうちイメージ図載せます)
マンガワンに見るリスク&リターンのマネタイズ
今回の本題は漫画アプリの「マンガワン」です。
ライフを使って漫画を読み進める形式の漫画アプリですが、そこにリスク&リターンの工夫がありました。
基本システム
簡単に基本システムをおさらいさせてください。
・ライフは9時と21時に各4つもらえる
・1ライフで1話読めるので、無料でも1日に8話読める
・課金で話を読めるチケットなどを買うこともできる
基本システムは以上の3つです。
隠しシステム
特にヘルプページなどで説明されてるわけではないのですが、無料で1日に8話よりも多く読むシステムがあります。
これを隠しシステムと呼ばせてください。
・「ライフが尽きる && 特別なライフやチケットなども持っていない」状態になると「動画をみて読みますか?」という動画広告誘導が表示され1話読める(こちらも9時/21時でリセットされるので1日2回まで)
つまり課金ライフ含め何も温存していない状態なら1日10話読めるわけですね。
課金してライフを持っているユーザーよりも限定的な面で見るとお得と言えます。
これは無課金ユーザーが「最大リターン」を取りに行くには、常にライフを使い切る必要があるということです。
最大リターンの先にあるもの
リスク&リターンの考え方からすると、最大リターンを取るにはリスクを背負っていることになります。
では、先ほどの動画広告まで使い切ったらどうなるか?
そこにあるのは「課金アイテムを購入して、この先も読みますか?」です。
当たり前ですね…。
常に最大リターンを取りに行っている無課金ユーザーは、毎日2回この課金誘導のリスクを背負っていることになります。
先がめちゃくちゃ気になる展開なこともあり、誘惑に負けてしまう人もいるのではないでしょうか?
そう、私ですね。
そう、私です。
まとめに入ります。
まとめ
は~、つまり、今回の話は私がマンガアプリにうまいこと課金させられてしまったので、感心したって話でした。笑
漫画もゲームも同じで、無課金ユーザーを少額でも課金ユーザーに転換させることはとっても重要なことですよね。
ゲームのリスク&リターンの話をうまいこと利用して、ある程度リテラシーの高い無課金ユーザーを狙い撃ちといったシステムでした。(そもそも課金してる人は動画広告で余計に1話読めるってことを知らないと思います)
これをゲームで考えると…?
石を使い切ったら1日1回限定とかで動画見れば石貰えるけど、いつかガチャの欲望に耐え切れなくなって課金すると…
無課金優遇なので少し難しいところはありますね笑
ですが、石のため込みっていうのは業界的にも少し問題になっているところで、現在は「有償石限定ガチャ」や「無償石配布量を絞る」などの対応を取っているところが多いですね。
ちょっと変わり種ですが、導入検討の余地はあるのではないかなと思います。
リスク&リターンを度外視するテクニック
リスク&リターンの話
2012年CEDECの桜井氏の基調講演である「あなたはなぜゲームを作るのか」の中で「ゲーム性とはリスクとリターンである」という内容の話があったことはあまりにも有名です。
「リスクが上がれば上がるほど得られるリターンは上がっていく」というのが基本的なルールですが、それを度外視することによって得られるものもありますというお話です。
リスクとリターンの関係
本題に入るまえに、リスクとリターンの関係を実例を踏まえておさらいします。
リスクとリターンの関係は徐々に上がっていくものであって、それが中途半端な位置に入っていると攻略要素の低下や理不尽に繋がり面白くありません。
例えばタイミングよくボタンを押すだけのゲームでも、正解のタイミングに近づいてくればくるほど「GOOD → GREAT → PERFECT!!! → BAD」と評価が変化します。
(細かい話をすると音ゲーならPERFECTの後にもGOODやGREATのタイミングがありますが、前半の猶予フレームより短い方が健全です)
これは最大リターンのPERFECTのすぐ後にBADあることが重要で、最大のリターンを取れる行為の裏側は最大のリスクであるということです。
例えばBADがGOODとGREATの間にあると、ゲームは途端につまらないものなりそうです、想像できますね?
実例
DARK SOULS
アクションRPGの傑作であるダークソウルシリーズには「パリィ」という技があります。
簡単に説明すると敵の攻撃を弾くことで、最大反撃を入れることができる技です。
▲『DARK SOULS』のパリィによる反撃
「パリィ」はシステム的にはとても強く高威力のダメージを与えることができます。
ですが、失敗すると、自分が一定時間無防備になってしまいます。
タイミングはシビアで、上級者向けのアクションといえるでしょう。
これがアクションゲームにおける正統派のリスクとリターンです。
リスク&リターンの度外視とは
今回の本題です。
これらをぶち壊すことで作品を面白くできることもあるので紹介させてください。
『ベヨネッタ』というアクションゲームはプレイしたことがあるでしょうか。
ゲームが苦手な方でもいろんなボタンを押しているだけで多彩な技を繰り出すことができ、非常に爽快感を感じることができるゲームです。
つまり、初心者でも楽しめるように設計されたアクションゲームということですね。
そのようなゲームに先述の「パリィ」というシステムを最大リターンとして組み込んでしまうと、初心者が楽しむことは難しそうです。
では『ベヨネッタ』の「最大リターン」はどこにあるのでしょう?
リスク&リターンの常識を覆す「ウィッチタイム」
「パリィ」に近しいシステムとして『ベヨネッタ』には「ウィッチタイム」というシステムがあります。
▲『ベヨネッタ』のウィッチタイム発動中
いわゆる回避技で、敵の攻撃をギリギリで避けることによってしばらく敵の行動をスローにして自分が好きな技を相手に叩き込むことができます。
これだけ聞くと「パリィ」と似たようなものですね。
並のゲームであれば、やっぱり「ウィッチタイム」発動のトリガーである「回避」にはそれ相応のリスクを付けるものでしょう。
ですが、そこに工夫の余地が残されてました。
なんとウィッチタイム発動のトリガーとなるこの「回避」、連打できます。
これはここまで話してきたリスク&リターンの関係性を明らかに度外視しています。
回避することにほとんどリスクがないので、回避連打しながらたまーにいいタイミングで回避が入ってウィッチタイム発動!ということがよく起きます。
何故それが許されるのかというと『ベヨネッタ』が「初心者が気持ちよくアクションできること」をコンセプトとしてるからではないでしょうか。
もちろん上級者向けの奥が深い部分も用意されています。
アクション自体が気持ち良いので、それにはまって「次はもっとうまく」とステップアップできるわけですね。
ウィッチタイムは本作でもとても気持ちが良い部分ですから、これをアクションが上手くないと発動しない設計にしてしまうのは非常にもったいないです。
「初心者だから最初は難しい」ではなく「初心者だけど最初からうまくできる」ように設計されたシステムです。
私自身アクションゲームはそんなに得意ではなかったのですが、『ベヨネッタ』というタイトルはアクションゲームを好きになるきっかけになったタイトルでした。
まとめ
以上、リスク&リターンを度外視するテクニックでした。
参考になったでしょうか。
今回の実例はアクションゲームでしたが、対人戦のゲームではこうはいきません。
リスク&リターンを無視してしまうと、ひたすらそれだけをしていればいい行動が生まれてバランスが崩壊してしまうからです。
対人戦のゲームにはリスク&リターンの基本を守った公平さが求められます。
なので、対戦格闘ゲームなどでは今回の「ウィッチタイム」のようなシステムは見られないですが、そういった部分は逆にアイデアのチャンスではないかと思います。
ひょっとしたら「初心者でもできるめちゃくちゃ気持ち良い格闘ゲーム」が生み出せてしまうかもしれませんよね?
ゲーム制作には時としてルールを破る力も必要です、そんなお話でした。
UIのモチーフテクニック
UIモチーフの話
ロゴ/ボタン/ヘッダー/フッター/アニメーション/画面遷移/ダイアログ……などなどUIの仕事は多量にありますが、統一感(そのゲームにしかない特色)を出すにはどうすればいいでしょう?
それにはモチーフが必要不可欠です、というお話です。
モチーフの必要性
単純にデザインを合わせるだけなら「フラットデザイン」や「マテリアルデザイン」など名前のついた手法で作ればいいかもしれません。
しかし、ゲームの場合は
"ゲームイメージとUIをどこまでシンクロさせることができるか"
がとても重要になってくるため「モチーフ」という概念が必須になってきます。
パッケージ感、ユーザーの没入感に深く関わりを持つ重要な立ち位置です。
モチーフ実例
スプラトゥーン
下記の『スプラトゥーン』の記事はとても参考になります。
「イカ」「スポーツ」をキーワードに、連想する言葉からUIの形などを決めた、とありますね。
これがメインモチーフです。
個人的にはキーワードは最大2つが限度だと思っていて、3つあるとゴチャついてしまいがちです。
ここがブレなければ全体的に統一感のあるものに仕上がります。
アスファルト9:Legends
こちらは先日リリースされたばかりのスマートフォン、PC向けのレースゲームです。
動画を観ると思うとわかるのですが、恐らくは「レース」「車」などをキーワードに「速さ」「スピード感」を意識したUI制作を行ったのではないでしょうか。
多くのUIが左右から移動し、再び左右にはけるアニメーションが入っていたり、
UIの端のポジションから左右に開くようなアニメーションが組み込まれています。
同時に複数の四角が動く様はまさに「レース」のようです。
「速さ」をイメージしたUIの場合、体の傾きをイメージして通常長方形のボタンの形を平行四辺形にすることもあります。
『アルファルト9』では長方形のUIが多く見られますが、それはモチーフが「車」だからかもしれないですね。
このように、どういったモチーフでUIを作っているのか考えることは普通にゲームを遊ぶよりもより良い勉強になると思います。
実制作で発生する問題
実例も踏まえて、メインモチーフがどのようなものかわかってもらえたと思います。
しかし、実際のゲーム制作では壁にもぶつかります。
「表現方法が足りない」問題です。
メインモチーフにこだわりすぎるあまり、引き出し不足でほぼ全てのUIが同じようなもの、ワンパターンになってしまうという問題ですね。
そこで登場するのがサブモチーフです。
メインモチーフのルールに合わせることで統一感は失わないように、アクセントの役割を果たします。
ゲームはエンタメですので、UIにも「ユーザーを飽きさせない工夫」が必要です。
なおかつ、ゲームの雰囲気やイメージと強く紐づいたものである必要があります。
難しく感じるかもしれませんが、実はサブモチーフはメインモチーフの表現よりも簡単です。
サブモチーフには実体のあるものを選ぶからです。
メインモチーフはなんとなく概念的でしたが、実物になるとデザインもやりやすくなります。
具体例を紹介します。
サブモチーフ実例
スプラトゥーン2
『スプラトゥーン2』から実例を紹介します。
先述の記事では、このサブモチーフの話はありませんでした。
『スプラトゥーン2』のサブモチーフは「商品パッケージ」です。
▲『スプラトゥーン2』ロビー画面
赤枠で囲った部分がパックのようになっており、上部はお店にあるフックにかけられるような形をしています。
▲『スプラトゥーン2』リザルト画面
「おカネ」「ランク」の上部がフックにかけれる形になっています。
また、ギアもそれぞれフックにかけれる形になっており、ギア自体は先ほども出てきたパックの形状をしていますね。
また、実際にゲームでみるとわかりますが、このフックにかける部分を中心に揺れるアニメーションが随所に入っています。
ニーアオートマタ
ニーアオートマタでは、UIの隠しモチーフとして「楽譜」が採用されています。
美しくも儚いニーアの世界観にアクセントとして一役買っています。
ペルソナ5
UIの話になると必ずと言っていいほど名前が上がるペルソナシリーズ。
作中よく出てくる「スマホ」はもちろん、システマチックな部分(セーブデータ)ではスマホのローテク版とも言える「ノート(手帳)」をモチーフとして取り入れ、世界観を壊さない工夫をしています。
まとめ
以上、UIのモチーフテクニックでした。
参考になったでしょうか。
スマートフォンゲームではUIにこだわりのあるゲームというのは少ないです。
・優秀なUIデザイナーが業界全体で不足している
・UIにそこまでコストをかけられない
・責任者の理解がない
などが主な理由だと思います。
スマートフォンゲームでもUIに工夫を感じさせるゲームが増えるといいですね。
【2020年5月 追記】
2018年頃はそんな感じでしたが、2年経った現在ではスマートフォン向けゲーム1本あたりの予算も上がっています。
それに伴いUIにも力を入れているタイトルも増えてきました。
機会があれば今後ブログ内で紹介できればと思います、これからのUIの更なる地位向上にも期待です。